ディスカッション <日本の人材育成と組織マネジメントの問題点>

ディスカッション <日本の人材育成と組織マネジメントの問題点>

2017年2月23日に開催された、
第2回フレーム&ワークモジュールカンファレンスにおいて、
世界を舞台に、名立たるグローバル企業の社長や社外取締役を歴任されている、
岩崎 哲夫氏(社団法人国際経営協会 元代表理事)と、
ハーバードビジネスレビューやテレビでも大変人気の高い、
入山 章栄氏(早稲田大学ビジネススクール)をお迎えしての、
パネルディスカッションの様子をお伝えします。

 

日本の人材育成と組織マネジメントの問題点

田 原:日本の働き方改革は、世界だけでなくアジアの新興国にも
遅れをとっている状況ですが、逆に、日本の人材育成の良いところ、優れている点は、いったいどんなところでしょうか?

岩崎氏:確かに、日本型経営には、問題が山積みです。
しかし、一方で、日本の良いところも沢山あると思います。

たとえば年功序列、生涯雇用、企業内組合など。
今は、これらの悪い部分ばかりに着目していますが、良い部分までを簡単に捨て去っているのではないかと思いますね。

日本の雇用慣行は、海外から見ると非常にユニークであり、過去に、ジャパンアズナンバーワンと世界に言わしめてきた、
日本経済の発展の要因であるとも考えられているのです。

善し悪しの物差しは国内だけの狭い視野では計れません。
私は、日本の良さを再認識しない限り、 日本の強みを活かせないのではないかと思いますね。

日本がアメリカ的に雇用関係を変えようとしても、絶対に変えられない。
アメリカは移民の文化で日本とは文化が異なるので、無理なことをしようとしてもうまくいきません。

田 原:入山先生は、いかが思われますか?

入山氏:共感する部分がありますね。
ダイバーシティ経営は今注目されてはいますが、日本では岩崎さんがおっしゃったように、少しムリをしている。

ポイントは、何の為にダイバーシティをやるかです。

ダイバーシティをやりたいからするのではなく、会社を良くしたいからダイバーシティを進める。
男性女性、日本人外国人というよりも、違った価値観を持つ人たちが集まり、一枚岩になることで新しい価値観が生まれるのだと思います。

ただ現状、働き手は男性が多いから、女性ばかりが取り上げられていますが、
価値観が違う者が必要なわけですから、男性だって良いと思いますよ。

属性、例えば男性女性、日本人外国人といった見た目の違いに頼ったダイバーシティを
「デモクラシー型」といい、属性ではなく知見、考え、価値観の違いで構成されたダイバーシティを「タスク型」と言います。

BtoCの会社で、女性が多い方が良いのは、お客さまの半分が女性だからなんですね。
BtoBの会社がムリをして、男性が多いから女性を入れよう、とするのは、現状はデモクラシー型。
となると、男性は男性、女性は女性同士で固まってしまい、うまくいきません。

表面上のダイバーシティを推進するのではなく、本質として、会社が何を求めているか、
を考えることが重要だと感じています。

岩崎氏:我が社(アプライドマテリアルズ)は、「ファミリー経営」をしており、
世界のトップを走っている企業です。その会社の7人のエグゼクティブメンバーの内、2人がユダヤ人です。

ノーベル賞受賞者はユダヤ人が圧倒的に多く、賢者が多いとされていますが、
そんな彼らは、実は、日本をとてもリスペクトしています。

それはなぜかというと、ユダヤ人は発明や発見に優れていてもコマーシャリゼーション(商品化)が
下手だと言うのです。

彼ら曰く、コマーシャリゼーションのスキルは、集団のイノベーションであり、
彼らには、どうしてもできないことを日本人たちがやっていると言います。

それ故に、日本をリスペクトしているんですね。
これは、一例ですが、このように、違う物差しで我々日本人の強みを見出さないとなりません。
戦略の立て方や、何のためにやるか、という目的が重要です。

入山氏:「ファミリー経営」が良いかどうかは経営学でも研究が行われています。
そして、多くの研究結果の中で、「ファミリー経営」の方がじつは業績がいい、ということがわかってきました。

上場企業の三割くらいがオーナー企業で、2000社くらいの企業を2〜30年間分析してきた結果、
利益率も成長率も同族企業の方が良いという結果が出ています。

その理由の一つとしてあげられるのが、ビジョンや理念がしっかりしている、ということ。
社長が2年3年任期で変わるようなサラリーマン企業だと、社長の任期に紐づいて会社の方針が変わり、軸がブレてしまい、
結果的にいろんなことができなくなります。
今だいたい面白い会社はみんなファミリー経営だと感じていますね。

田 原:日本でそれをどのように活かしていけばよいとお考えですか?

岩崎氏:人を育てるときに、人の属性の違いを見てはいけません。
その人個人の持つ目標、目的を認識する。それにしたがって、その人の持つ能力を発揮してもらう。
例えば開発や企画というものは、いたずらに時間をかけるものではないと私は思っています。

さらに、企業側が多様な人を採用できるかどうか。
イノベーションを起こす為に、結局は無法地帯をつくるしかありません。
そのような企業となれるトップ(リーダー)を作れるのは、CEOしかいないのです。
CEOは、決意をしてトップ(リーダー)を作り人を育てることが重要です。

入山氏:それは、トップとなる人材に関連会社を設立させて、治外法権にして、
本社とはルールを変えて良いからやってみろ、と、そういうことですか?

岩崎氏:そうですね。例えばアプライドマテリアルの例では、
新規事業を行う時にビルディングⅡという特別なビルを使っていました。

ここでは通常、アプライドマテリアルが持っている労働慣行や規則を全部外しています。

例えばサンクスギビングデーに、煌々と電気を付けて働いている。
給与の仕組みもインセンティブも異なり、動機を与えてやる。

日本だけでなく世界中の企業で、そのような無法地帯を作ることが必要となっています。
新しいことをする際には、そのような環境が必要だということですね。

田 原:入山先生は色々な企業を沢山みていらっしゃいますが、そのあたりはどうですか?

入山氏:先ほどのサンクスギビングデーの話が面白いなと思うのですが、今週から日本でもプレミアムフライデーが始まりますね。
しかし、プレミアムフライデーほど、日本がいかに多様化していないかを示す物はない、と思います。

これからの企業は、多様な人材を取り入れ、自由にすることで、新しいものが出来てくると思うのですが、そうなると人の働き方も
バラバラになってくる。

つまり、いつ休もうがいつ働こうが一緒で、一人一人の生産性が上がることが重要です。

プレミアムフライデーはだれもが毎月末の金曜日に15時で仕事を切り上げよう、という話で、
これほど日本人が同じように働いているということを示すものはありません。

日本が一番良くなるのは、プレミアムフライデーという仕組み自体がなくなることなんじゃないかと思います。
働きたい人はいつ働いてもいい。それこそサンクスギビングデーでも正月でも。
そういう状態を作ることが大事だと思います。

岩崎氏:先ほど紹介したビルディングⅡの結果としては、労働時間等はめちゃくちゃでした。
ただ重要なのは、そのように、意義を感じて働ける場があること。

入山氏:労働環境がつらいのは良くないが、つらい理由というのは「やりたくないことをやっている」からです。
もちろん体は大事にしないといけませんが、仕事に意義を見出すことができ、馬力を出して進める環境にある、
ということが大事です。

嫌々やらされる仕事ならば生産性もあがらないのは当然です。

岩崎氏:多様な人材をどのように集めるか、日本の会社でも簡単にできると思っているのですが、どうも大変難しい状態になっている気がしますね。

田 原:組織マネジメントの問題点というものも議論のテーマとして上がっているのですが、
どのように具体的に変えていけばよいでしょうか。

岩崎氏:新企画にせよ新製品にせよ、会社がやろうとしている物事にはかならずゴール、目的があります。
多様な人材が集まってその目的を達成する為に働く。
始めは小さいグループから徐々に大きくなると思いますが、その際に仕事のサクセスクライテリア(成功の基準)を決めることが大事ですね。

仕事に対してのアサインメントをお互いにシェアし合う。それによってベクトルができる。
目的を果たす為にその人の力量をどのように発揮するか、どう成功したいか、成功するためにどうするか、を議論することです。

入山氏:組織の話でいうと、「壁をぶっ壊す」ということですね。
日本の場合、壁がとにかく多すぎます。多様な人が入ってきたとしても、交流ができない。
壁をぶっ壊すというのは、一番単純だが一番重要で、でも一番日本企業ができていないことだと思います。

もう一つは先ほども出ましたベクトルの話、いい会社というのは、長期ビジョンがはっきりしています。
そしてその方向性に共感した人たちが集まっている。人はみんな、成功したいものです。
でも成功するにはどうしたら良いか、と考えた時に、「この会社がやっていることが面白そうだからそこで一緒に成功したい」となって、
そこでその会社のビジョンが個人目標にまで降りてくるんですね。

ところが今の日本だと、トップの任期が短いため、会社自体が何をしたいかがわかっていない状態です。
ひとえにビジョンが足りない。グローバルな大企業ほど、ビジョンをものすごく大事にしています。
トップ、CEOの役割は「ビジョンを語る」ことです。ビジョンが揃うとベクトルが揃います。

田 原:日本企業の強みを活かすには、私は、「モジュール化」が必須だと考えています。
お二人のキーワードとして、「属性で人を見ない」という言葉があがっていましたが、
まさに、仕事をモジュール化するというのは、オープン化することであり、概念化することでもあります。

そして、欧米のジョブディスクリプションとは、まったく異なる、業務の見える化・モジュール化を通じて、
組織や組織内のコミュニケーションや風土が活性化し、新しいスタイルの、和(WA、輪)を大切にした、
日本の新しい仕事のスタイルを作っていきたいと考えています。

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